interview 山口 洋(HEATWAVE)4/4『求められる自己管理能力』

harvestfarm

2014年08月30日 23:21

interview
山口 洋(HEATWAVE)4/4
『求められる自己管理能力』





interview 山口 洋(HEATWAVE)1/4『震災後の日々の中で』は、コチラからご覧ください。
http://harvestfarm.ti-da.net/e6694913.html

interview 山口 洋(HEATWAVE)2/4『すべてを一人でやる試み』は、コチラからご覧ください。
http://harvestfarm.ti-da.net/e6694916.html

interview 山口 洋(HEATWAVE)3/4『バンドとしての着地点を求めて』は、コチラからご覧ください。
http://harvestfarm.ti-da.net/e6694921.html


メンタルがやられるとフィジカルが引っ張る。
体力の大切さ、そしてあと2cm足を伸ばして、より大きな結果を生むということ。


◎走ったり、スキーをやったり、身体を鍛えることで何か変わりましたか?
「変わった。メンタルがやられた時に、フィジカルが引っ張る。その逆もある。だから常にバランスっていうのを意識してる。これくらいツアーのスケジュールが立て込んでくると、流石に走らないけど。鞄の中にはそういう道具が入ってて、月間300kmぐらいは走ってる。
 一番必要なものは体力でしかないっていうか。体力がないと最後の判断すら間違える。どっちみち50歳とかだから、下り坂になっていくわけじゃない。その中ではやっぱりすごく大事だと思うよ。細胞が本能的に反応してる感じとかがわかる。身体鍛えてなかったら、もう死んでると思うもん。
 あのさ、ワールドカップのサッカーをみてて、サッカーの選手になってみたかったとか思う?」

◎ありえない話ですよね。(笑)
「あれは、能力的に相当に選ばれた人間だよね。すごいなって思うし。
 ワールドカップの試合を毎日みてて、すごく面白いと思うのはさ、今日のアメリカ(7/1に行なわれた決勝トーナメント1回戦、アメリカvsベルギー。延長でベルギーが勝利)にしても、もう負けるのはわかるんだよ。で、その差が何かって、スローモーションのビデオとかみてると、足があと2cm伸びるかどうかとかさ、それだけのことが大きな結果の違いになって出てくる。それをクリエイティブな現場でも、ライブの現場でもまったくおんなじことなんだよね。
 それを自分に置き換えると、やっぱり最後の2cm足が伸びるような、努力はしておきたい。それはフィジカルなことでもあるけど、すごくメンタルなことでもあるでしょ」


音楽バカだった“あの頃”の自分が好きじゃない。

◎バンドのアルバムって、以前事務所に所属をしていた時は、スケジュールから予算まできちんと管理されていて、いろんな縛りがあったと思うんですが、今はそういう縛りがないですよね。
「リリースが、どこまでも伸びて行くというのはあるよね。逆に言えば、音楽をやりたかった原点には戻れてる。同時に自己管理能力を求められるというのはある。(笑)ただ、俺は自分がメジャーになりたいという欲望はもとからないからさ。それがどうなのかという人もいるけど、嫌なことは一切やってないから、ストレスはないんだよね。それがいいのか悪いのかは、俺にはわからない。『何であいつら売れないんだ?』って言われるけど、俺の特質だからね」(笑)

◎レコード会社に管理されていた頃に出した作品を今聴いてみて、何かしら足りない部分を感じることもあるんですか。
「それは思わないよ。その時は与えられた状況の中で、全力を尽くしていたし。でも、逆に言えば、音楽バカだったね。そして感謝の意味さえ分かってなかった。あれ以外何もできない人間だった。俺はあの頃の自分が好きじゃない。今、聴いても…、自分では聴かないけど。(笑)聴かされたりすると、よくできてるなぁとは思うけどね。もちろん全力を尽くしているのは、今聴いてもわかる。でも、何か全部音楽じゃん。俺はそれ人間としてあんまり好きじゃない。その過程があったとしても、常に音楽が重視されてる。人間ってそれだけじゃないと思うんだよね。
 俺の場合は本当に一度に2つのことができないっていうものすごい弱点があるから。だから、音楽だけを信じて生きてきたんだろうけど。あのタームの中で、毎年最高到達点をクリアしていくのは、音楽しかやってないという状況の中では本当に厳しかった。だって人間的に成長してないんだもん。何かにガードされてツアーして、リリースしてさ。だから俺外国とかに逃げてたんじゃん。(笑)
 あと何枚残せるのかわからないけど、俺は今の方が遥かに好きだけどね。パフォーマンスっていう意味においてもね」

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 インタビューの中で、山口洋は、ブルース・スプリングスティーンのアルバム『ネブラスカ』になぞらえて話していた。録音のスタイルにおいては、その通りだが、アルバムの内容について、私自身は、“911”の後に発表された『The Rising』に近いように感じている。スプリングスティーンが、“911”後の、多くの人々の喪失感や絶望感を代弁し、作品を通して物語を紡ぎ、勇気づけ、メッセージを送っていたのと同じように。『Songs of Experience』にも、同じような気分が感じられる。
 “311”の後、日本中に蔓延する不安を共有し、少しでもそれをぬぐい去り、一歩でも前を向こうという意思。わけのわからない漠然とした不安がのしかかる、先の見えない世の中だからこそ、音楽をはじめとする表現が灯してくれる灯りは、とても大切なのだ。

 8月26日、HEATWAVEのニューアルバムのリリースと、それに伴うツアーがアナウンスされた。アルバムは7年ぶりになるそうだ。8月29日現在、山口のブログをみると、制作は継続中のようだが、インタビューの中で山口が話したように、まさにダルマに目玉が入ったような、HEATWAVEの最高到達点の作品を聴ける時が目前に迫っている。心から楽しみに待ちたい。(了)


HEATWAVE ROCK'N ROLL ASS HOLE
http://no-regrets.jp/heatwave/


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